箱庭で遊ぶ日々

よく考えながら生活していくために

85歳人曰く,「観たい番組がない!」

一週間に一度,85歳の一人暮らしの義父の家を訪れている.介護,というほどではないが,昼食と夕食の準備,洗濯物少々,片付け少々,話し相手少々,といった作業をしてくる.

 そこで,毎回,何度も聞かされるのが,「観たい番組がない」という台詞である.ときには唸りながら辛そうに,ときには怒りを滲ませて,テレビのスイッチを入れるたびに同じことを言う.最近では,それにプラスして「コロナのニュースばかりで,イヤになっちゃう」である.唯一楽しみにしているのは,大相撲とNHK大河ドラマだ.大河ドラマも「明治時代以降は,つまらない,」とのこと.

私は,高齢者の愚痴を聞くのが嫌だ.さらにいうと,愚痴ばかり言う高齢者は嫌だ.と,私の愚痴になってしまっているが,自分が本格的な高齢者になったら,他人に加齢にともなう愚痴を言わないようにしたいと心に誓っている.反面教師である.

 訪問されるたびに「観たい番組がない!」と連発されると,「何とかしてくれ〜」という叫びにも聞こえてくるものだ.それに応じるつもりで,12月にひかり回線の設備を整え,ひかりTVなるものを観られるようにした.時代劇チャンネルや,ファミリー劇場,ちゃんねるネコといった,ときどき昔の番組や映画を放映してくれるチャンネルである.

 早速,60インチのテレビで見られるように設定したのだが,「大して面白いのがやっていないよ〜」と言う.「沢山ちゃんねるがあるから,色々,試して観るといいですよ」と言ってみても,「好きな時代劇は,ほとんど観たので,同じものばかりだ」という.また,新しいリモンコンの操作に慣れずに他のボタンを押してしまうので,通常楽しんでいた番組に戻ることができず,イライラとして不満げな声を上げる.

 結局,1月の大相撲が始まった頃には,「観たい番組がないから」ひかりテレビ用のチューナーを外してくれと言い出し,お金をかけて設置したことが無駄になってしまった.「やっぱり私には無理だから,折角だけれども必要ないな,ごめんね.」という謝りの言葉もなくである.正直,頭に来た.

 

と,このままでは,単なる私の愚痴になってしまうが,重要なのは,この現象について深く考え,自分がそうならないためにどのよな対策をとるべきか,という姿勢だ.

 

1.なぜ,新しい番組をじっくりと観てみようとしないのか?

考えられる理由)

・自分と同世代の主人公が活躍する番組が少ない.

・同世代のものが出演している番組が少ない.

・話の内容についていけない.

 

2.この現象は,85歳の高齢者では,共通して見られる現象か? それとも,義父特有の現象か?

仮説の例)

・85歳までの社会経験(学歴,職業等)によって異なる傾向が見られる.

・個人の性格特性の影響を受ける.

・身体機能・認知機能の状態によって異なる.

 

1に関して考えてみると,私自身,古い音楽ばかり聴いている.その方が楽で気持ちが良いからだ.同世代のミュージシャンが活躍しているのを見るとなんだか嬉しくなってしまう.高齢化現象が始まりだろう.何歳くらいからだろうか.

 

2に関して,義父特有の現象なのか,特定の生物心理社会的背景をもった高齢者で共通する現象なのか,調べてみると面白いかもしれない.テレビに限らず,「高齢者の余暇活動についての調査」というテーマになるだろうか.